お葬式の時にご飯にお箸をさすのはどうして?
お葬式の会場で、亡くなった方にお供えするご飯に、お箸がまっすぐ突き立てられているのを見たことはありませんか?
日常の食事でこれをやると、「縁起が悪いからやめなさい!」とお叱りを受けるタブーですが、お葬式ではあえてこの形にします。
なぜお葬式の時だけ、ご飯にお箸をまっすぐ立てるのでしょうか?そこには、残された人たちの優しさと、あの世への旅立ちを応援する意味が込められていました。また、そのご飯を盛り付けた「お茶碗」にも、出棺のときに行われる大切な儀式があります。
1. 突き立てたお箸が「あの世への道しるべ・架け橋」になるから
諸説ありますが、お箸をまっすぐ立てることで、亡くなった人が迷わず旅立てるようにするためです。
お葬式のご飯に立てられたお箸は、暗く険しい「あの世への道」への道しるべの役割を果たすと言われています。
また、古くからお箸(はし)という言葉は、向こう岸へと渡るための「橋(はし)」に通じるとされてきました。つまり、ご飯に立てたお箸が「この世(現世)からあの世(あの世)へと無事に渡るための架け橋」となり、故人様が迷子にならずに極楽浄土へたどり着けるように、という願いが込められているのです。
2. あの世への「長旅」に備えてもらうため
亡くなった人は、これから49日をかけて「あの世」へと向かう長い旅に出るとされています。
その旅の途中、お腹が空いて歩けなくなったら大変ですよね。そのため、お供えするご飯は「これでもか!」というくらい、お椀に山盛りにします。
そして、その山盛りのご飯のてっぺんにお箸を立てることで、「これから大変な長旅が始まるから、このご飯をしっかり食べて元気に行ってね!」というエールを送っているのです。
3. 日常(生者)と非日常(死者)をハッキリ区別するため
仏教や日本の伝統には、「生きている人の世界(日常)」と「亡くなった人の世界(非日常)」をあえて真逆にするという文化があります。これを「逆事(さかごと)」といいます。
- 着物の合わせを逆にする(左前)
- 布団の上下を逆にする
- お箸の立て方を逆にする(寝かせるのではなく、立てる)
もし、生きている私たちと同じようにお箸を横に置いてしまうと、あの世とこの世の境界線があやふやになり、亡くなった人がこの世に未練を残してしまうかもしれません。
あえて日常とは違う「お箸を立てる」という方法をとることで、「あなたはもう新しい世界へ旅立ったんですよ」と優しく現実を伝え、成仏を促す意味があります。
【あわせて知りたい】出棺のときにお茶碗を割る理由
ご飯を高く盛り付け、お箸を立ててお供えしたあと、出棺(故人様を火葬場へ送り出す)のタイミングで、そのご飯を盛っていたお茶碗をパリンと割る儀式を行うことがあります。
大切にしていたお茶碗をわざと割ってしまうなんて、少しびっくりしますよね。これには次のような意味があります。
「あなたの愛用していたお茶碗は、もう無くなってしまいました。だから、ご飯を食べるためにこの家に戻ってくるのではなく、迷わず真っ直ぐあの世へ行ってくださいね」
お箸を立てることも、お茶碗を割ることも、すべては「故人様が迷子にならず、無事にあの世へ旅立てるように」という愛のカタチなのです。
まとめ:お箸を突き立てる・お茶碗を割る理由
- 突き立てたお箸が「あの世への道しるべ」や「あの世への架け橋」になる
- あの世への長い旅路で、お腹が空かないようにという優しさ
- 「ここからは別の世界」という境界線を示すため
- お茶碗を割ることで「戻る場所をなくし、未練なく成仏できるように」と願う
生きている間はやってはいけないタブーですが、お葬式の時だけは、故人様を想う最高の「おもてなし」になります。
一見、不思議で少し怖く見えるかもしれないあの光景には、残された家族の「お腹いっぱい食べて、迷わずあの世へ行ってね」という温かい願いが込められているのです。
※本記事でご紹介した内容は、一般的な一例です。お葬式の風習やマナーは、宗旨宗派(例えば浄土真宗など)や、各地域の習慣によって内容が異なる場合がございます。
ご自身の具体的な作法や、事前の準備について詳しく知りたい方は、いつでもお気軽にご相談ください。