お葬式でよく菊が使われるのはどうして?
お葬式や法事、お墓参りなどで、必ずと言っていいほど見かける「菊(キク)」の花。お葬式の祭壇も、白い菊で美しく飾られていることが多いですよね。
「お葬式=菊の花」というイメージが定着していますが、バラやヒマワリではなく、なぜ数ある花の中から菊が選ばれるようになったのでしょうか?
そこには、菊が持つ驚くべきパワーや、歴史的な背景、そして亡くなった方への思いやりが関係していました。
1. 「長持ち」するから
菊が多く使われている理由は、菊の花が「とにかく長持ちして、枯れにくいから」です。
今のように冷房やドライアイスがなかった昔の日本では、お葬式を数日間にわたって行う際、お花が途中で枯れてしまうのが大きな悩みでした。
しかし、菊は数ある植物の中でも特に生命力が強く、切り花にしても水が腐りにくく、美しい姿を長く保つことができます。
また、枯れるときに花びらがポロポロと散りにくいため、「お葬式の場を汚さない(周囲をきれいに保てる)」という点でも、昔の人にとって非常にありがたい花だったのです。
2. 邪気を払い、心身を健やかに保つ「不老長寿の薬草」だったから
大昔の日本では、菊は単なる観賞用の花ではなく、「邪気を払い、寿命を延ばす不思議な力があるお薬(薬草)」として大切にされていました。
中国から伝わった「重陽の節句(ちょうようのせっく・9月9日)」という行事では、菊の花を浮かべたお酒を飲んで、病気にならないようにお祈りをする習慣(菊酒)があります。
お葬式という場所は、大切な人を失って遺族の心も体も疲れ果て、悪い気(邪気)が寄り付きやすい状態になっています。そこで、強力なパワーを持つ菊の花をたくさん飾ることで、「お葬式の場から悪いものを追い払い、残された人たちの心と体を守る」という意味を込めて使われるようになったのです。
3. 仏教の「お花を供える」考え方にぴったりだから
仏教では、仏様やお墓に供えること花を「供花(きょうか・くげ)」と呼び、これには「お供えする人の心を穏やかに、清らかにする」という意味もあります。
菊のどこか厳かで清々しい姿は、お葬式という神聖な儀式の場にぴったりでした。また、花言葉も「高貴」「高潔」といった、故人様への敬意や、哀悼の意を表すのにふさわしい意味を持っています。
さらには、明治時代以降にヨーロッパから「お葬式には白を基調とした花を飾る」という文化が入ってきたこともあり、日本古来の「高貴な花である菊」と結びついて、お葬式の花として定着していきました。
まとめ:お葬式に菊を使う理由
- 他の花に比べて「長持ち」し、花びらが散りにくいから
- 古くから「邪気を払い、心身を健康に保つ」特別な力があると信じられていたから
- 故人様へ「敬意(高貴)」を表すのにふさわしい花だから
現代では、時代が進んだこともあり、菊だけでなく故人様が好きだった種類の花やカラフルなお花で祭壇を飾る「生花祭壇」も増えています。
それでも、菊が選ばれ続けている背景には、「大切な人をきれいな状態で、厳かに送り出してあげたい」「残された家族の心身を労りたい」という、昔の人の知恵と優しい想いがたくさん詰まっていたからなのですね。