柩(ひつぎ)に六文銭を入れるのはどうして?
お葬式のとき、故人様を納めた柩の中に「六文銭(ろくもんせん)」を入れる習慣があります。最近では本物のお金ではなく、紙に印刷された六文銭を入れることが一般的です。
日常では使うことのない昔のお金を、どうしてわざわざ柩の中に入れるのでしょうか?
そこには、亡くなった方がこれから向かう「あの世への旅」を支えるための、家族の思いやりが込められていました。
1. 三途の川(さんずのかわ)の「船代」だから
一番の理由は、あの世へ行く途中にある川を渡るための「運賃(船代)」として必要だからです。
仏教の教えでは、人が亡くなると「あの世(極楽浄土)」へ向かう旅に出ます。その旅の途中の7日目に、「三途の川」という大きな川が現れます。
この川を無事に渡るためには渡し船に乗らなければならないのですが、その乗船料がちょうど「六文(現在の価値で数百円程度)」と決まっているのです。
もしお金を持っていないと、川のほとりにいる衣服を剥ぎ取る鬼(奪衣婆・だつえば)に服を身ぐるみ剥がされてしまうと言われています。そのため、故人様が困らないようにお財布(頭陀袋・ずだぶくろ)へ六文銭を入れて持たせてあげるのです。
2. どうして「六」という数字なの?
なぜ「五文」でも「七文」でもなく、「六文」なのでしょうか?諸説ありますが、これには仏教の「六道輪廻(ろくどうりんね)」という考え方が関係しています。
仏教では、生きているときの行いによって、亡くなった後に次の6つの世界のいずれかに生まれ変わると言われています。
- 地獄道(じごくどう)
- 餓鬼道(がきどう)
- 畜生道(ちくしょうどう)
- 修羅道(しゅらどう)
- 人間道(にんげんどう)
- 天道(てんどう)
この6つの世界には、それぞれ人々を救ってくれる仏様(地蔵菩薩・お地蔵様)がいます。六文銭の「六」は、これら6つの世界にいるお地蔵様へ「これまで守ってくれてありがとう」とお賽銭を渡すため、あるいは「どの世界に行ってもお地蔵様が救ってくれますように」と路銀を支払うための数字ともいわれています。
3. なぜ現代は「紙に印刷したお金」を入れるの?
昔は本物の銅貨(一文銭を6枚)を入れていましたが、現代のお葬式では、紙に六文銭のデザインが印刷されたものを使うのや可燃性の代替品を用いるのが主流です。これには現代ならではの理由があります。
日本の法律では、火葬のときに本物の硬貨(金属)を燃やすことが禁止されているからです。
本物の硬貨を棺に入れて燃やしてしまうと、熱で溶けてお骨にくっついて汚れてしまったり、火葬場の炉を傷つけてしまったりします。
そのため、現代では「紙製の六文銭」をお財布に入れて持たせる、という形が定着しました。
まとめ:柩に六文銭を入れる理由
- 三途の川を渡るための「渡し船の運賃(船代)」だから
- 6つの世界(六道)にいるお地蔵様へのお賽銭・路銀という意味がある
- 現代は火葬のルールを守るため、燃える「紙に印刷した六文銭」を使っている
「あの世へ行くのにお金なんて必要なの?」と思うかもしれませんが、これには「長い旅路でお金がなくて困りませんように」「無事に川を渡ってあの世へ行けますように」という、家族の温かい優しさが込められているのです。
※本記事でご紹介した内容は、一般的な一例です。お葬式の風習やマナーは、宗旨宗派(例えば浄土真宗など)や、各地域の習慣によって内容が異なる場合がございます。
ご自身の具体的な作法や、事前の準備について詳しく知りたい方は、いつでもお気軽にご相談ください。